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乳幼児からの子育てに大切なこと

すがこどもクリニック  菅 尚浩

子育てとは本来、子どもに限りない愛情を注ぎ、日々成長する姿に感動し、親自身も成長していく生きがいのある営みです。
日出町は別府湾が一望でき、後方には鹿鳴越(かなごえ)連山が連なり、地下水脈も豊かです。子育てにはもってこいの土地だと日頃から思っています。
私自身も毎日成長していく可愛い子どもたちに接することができるのはとても幸せです。

しかしながら、これからは先行きの見えない時代なのかも知れません。そして2045年には、AI(人工知能)が人間の能力を上回ると予言されています。だから、これからの子どもたちは、いままでとはちがう教育を受けて、いままでとはちがう能力やスキルを身につけておかなければいけないと、多くの人が考えています。
日本ではいじめや虐待、子どもの自殺が増えています。こういう時に私たちは子どもにどう対処したらいいのでしょう?
住民の多くの人達が、子育てを支援していく必要があると感じています。
では、「子どもが自分らしく生きていけるよう、どんなときも自分自身で人生を切り開くことのできる、心の強い子に育って欲しい」ことを願って、一緒に考えてみましょう。

赤ちゃんの気持ちは?

子どもはお母さんのお腹の中で成長し、すでに様々なことを感じとっています。生まれてすぐから、母乳の匂いを感じとってお母さんを認識します。
生後1〜2ヶ月くらいになると、赤ちゃんは授乳中などにお母さんの目を見てにっこり笑います。これはお母さんの心の奥にある、幸福感や喜びに共感しているのだと言われています。共感する力の芽生えです。共感力というのは誰かの気持ちに寄り添える力です。
3〜4ヶ月になると今度は「そばにいるだけでなく、私を喜ばせて欲しい」と思います。5ヶ月くらいになると「喜ばせるだけでなく、わたしが喜ぶことをお母さん自身も喜んで欲しい」と思うようになります。
この「そばにいて欲しい」「一緒に楽しいことをしたい」という「喜びの共有」が、「共感力」「思いやり」の原点です。

子どもの脳は3歳までに約80%、幼児期早期にできあがる

この時期はまさに見るもの、触れるもの全てを吸収して行きます。それまでに作られた脳がその後の人生を生きていくための基盤になります。思いやりや我慢強さ、生活のリズムや生活のマナーといった基本的な生活スタイルを形成していきます。
たくさん抱っこされ、心地よさを与えられて育つと、自身も他者と触れ合い、心地よさを与えることができるようになります。
したがって、少なくともこの時期まではお母さんは常に赤ちゃんと向き合っていくことが大切です。無視や、無関心であることは、子どもの心の安心感や信頼感を損ねることになります。

愛着形成とは

母子の結びつきのことです。
赤ちゃんは生まれてすぐに、お母さんの胸に抱っこされると、自ら求めて母乳を飲みに行きます。最初の母乳を初乳と言いますが、感染予防の免疫力と栄養がたっぷりのお乳が入っています。赤ちゃんは「お腹が空いたとき」や「眠たいとき」「痛いとき」そして「恐怖を感じるとき」に大声で泣きます。このような時にお母さんが飛んできて、声かけします。つまり「困ったときに、この人は助けてくれる」という信頼が赤ちゃんに生まれてきます。
このような母子の結びつきを「愛着」(アタッチメント)といいます。赤ちゃんとお母さんとの間に心のつながりが生まれることです。
この「母子の愛着」があって初めて、子どもは自分を価値ある存在と感じ、お母さん以外の人とも安定した人間関係を築いていけます。たくさん抱っこされ、心地よさを与えられて育つと、自身も他人と触れ合い、心地よさを与えることができるようになります。

「母子の愛着」が形成される最も重要な時期は、乳児期から幼児期早期なのです。母子の愛着を育めた子どもは、人間関係のベースとも言える「基本的信頼」を覚えます。この「基本的信頼」は、他人と結びつく心地よさを知るはじめの一歩でもあります。また将来においても、お母さん以外の様々な関係にも適用するようになることになります。
つまり、愛着形成ができていないと、子どもに絶対的な安心感が得られていないため、ストレスに弱くなります。
また、安定した人間関係を築けない、依存性が強く、家族への反抗、暴力が起きるなどの症状の出現頻度が多くなります。

愛着形成するため、声かけ、笑い返し、アイコンタクト、スキンシップ、抱っこして絵本の読み聞かせをしてください。
たとえ短い時間でも構いません。毎日読んであげることが大切です。
たくさん抱っこされ、心地よさを与えられて育つと、自身も他者と触れ合い、心地よさを与えることができるようになります。
したがって少なくともこの時期まではお母さんは常に赤ちゃんと向き合っていくことが大切です。
無視や、無関心であることは、子どもの心の安心感や信頼感を損ねることになります。

話は変わりますが、
小泉英明氏は東京大学先端科学技術センター・国際アカデミー連合理事で、脳科学者です。日本で初めてMRI(磁気共鳴描画)装置の開発、実用化しました。MRIは磁場と電波を利用して、体の内部の断面から画像化する技術です。
続いて着手したのがfMRIです。これは血管の流速によって脳の活動部位を描画する装置です。ただこの装置はじっとしておかないといけないので、子どもには困難でした。それで、次に開発したのが、「光トポグラフィー」です。簡単なかぶりも物をつけるだけですから、自由に動いても大丈夫で、自然な環境で検査可能です。
いまは病気の診断だけでなく、人間の精神的な活動の研究や赤ちゃんの発達の研究にも応用されています。
小泉英明氏は光トポグラフィーを使って子どもの脳を研究されています。
2000年からは、未来に向かって観察する「コホート研究」に取り組んでいます。そして「脳科学と教育」というプロジェクトが立ち上がりました。

これまでの研究でわかったことは「かなり小さい乳幼児の時期に限っては、褒めて育てるのがいい」とわかりました。3歳以下くらいまででしょうか。

褒めて育てた群と特にそうではない群では、社会能力の指標に10%以上の差が生じました。また六年後の学童期でも、親子がコミュニケーションをとってきた例と、少ししかとってこなかった例では、社会性の指標に大きな差が出ることもわかってきました。

乳幼児期は身体系と脳神経系の土台が築かれる時期です。とりわけ神経回路が発達することがわかっています。その時期に子どもにとって良い環境を整えることが大切なのです。
具体的には、身の回りの物や自然の造化など、さまざまな物に手で触れることですね。

そうして何か、新しい動作ができるようになったり、新しいことを覚えたり、いままでできなかったことが上手にできるようになったりしたときは、心から褒めてあげる。
赤ちゃんは喜んで、また褒められたいと、学習への意欲をいっそう高めるのです。

近年、教育、保育の現場では、さまざまな行動の問題があり、その対応、支援、指導に困難を極める「気になる子ども」が増えています。
「してはいけないことを注意すると、余計その行動の問題が増える。」
「言うことを聞かないのに、文句や要求ばかりする。」
「激しい暴力行為が突然起き、抑えても収まらない。など。」
愛着障害(AD)の問題を抱える子どもたちです。

愛着という言葉の意味は「子どもと親(養育者)との間に形成される強い情緒的な結びつき」のことを言います。この「愛着理論」を確率したのは、イギリスの精神科医のジョン・ボウルビーと、アメリカの発達心理学者のメアリー・エインズワースです。人間の子どもにとって、恐怖や不安から守ってくれる「安全基地機能」です。そこに行くと、落ち着く、ほっとする「安心基地機能」です。
しかし、大人になってから必要なスキルや知識を得るために、危険を冒して探索し、遊ばねばならない。この相反する2つの条件が必要になります。この絆が育っていない問題が愛着障害です。親との愛着関係が結べなかった子どもは親という「安全基地」を築くことができません。そのため不安や恐怖を常に感じ続けることになり、それによるストレスが脳の成長や発達にもマイナスの影響を与えてしまいます。

こういった子どもの対応は愛着障害を意識することが大切です。その行動を止めさせようとして、叱れば叱るほど、それは逆効果で、その行動は増えてしまいます。また人間関係も切れてしまいます。愛着の問題は1対多数の子どもの問題でなく、一人対多数の関係でなく、一人と一人の良好な関係から築いていくと、意外と落ち着いてくれます。

子どもに幸せな人生を歩んでもらいたい!

親なら誰もがそう願うものです。そのためには誰かのきもちに寄り添える「共感力」あらゆる場面で自分のことを自分で決める「意思決定力」さらに生まれてきてよかった自分は自分でいいと感じる「自己肯定感」の3つ。
これらが育っていれば、子どもたちはどんな苦境にも、さまざまな困難にも立ち向かっていけると思います。

自己肯定感、日本は外国に比べて若者の自己肯定感が低いとよく指摘されています。 自分のことが好きだとか、なにかに挑戦するときに「わたしにはできる!」と思うだとか、そういう前向き思考につながる自己肯定感、こどもにとってすごく重要です。他人と比べるのではなく、「自分は大事な存在だ」「自分はここにいていいんだ」と自分を認める意識。それが、長い人生を充実したものにしていく力を子どもたちに与えてくれるのです。

子どもはきっとあなたの手助けで、感情のバランスを整えてキレない力を身につけ、目の前の困難からすばやく立ち直る力を発揮し、自分の心のなかを見て自分を理解する力を磨き、周囲の人たちを思いやって共感できるようになる。

子どもたちが自己肯定感を高めるために必要なことは、誰かから愛されるということです。

今の日本の子どもたちの現状

(日本の人口は約1億2400万人で15歳未満の子どもは約1435万人です)
小中高のいじめ認知件数は61万件(小学校はこの5年間で約4倍に増加)、小中の不登校16万件、児童虐待全国相談件数20万件(大分県1900件)、また、小中高生の7%にゲーム依存症があり、小6の半数、中3の7割以上がスマートフォンで交流サイト(SNS)や動画視聴を1日1時間以上視聴しています。4時間以上の視聴は小6が10.9%、中3が15.4%でテストの正答率は全てで最低でした。逆に新聞を毎日読む子どもは正答率が高くなります。
小児科学会のシンポジウムでは、子どもの自殺は年間、小中高生で500人以上にもなっています。
視力低下も年々増加しており、1.0未満の小学生は5年連続の増加で34%。中学生57%、高校生は67%。ゲームやスマホの影響と推察されています。屋外で遊ぶ機会が減って、あまり遠くを見なくなっていることが背景にあるようです。
国連児童基金(ユニセフ)は先進・新興国38カ国に住む子どもの幸福度を調査した報告書を公表、日本の子どもは生活満足度の低さ、いじめや家庭内不和、自殺率の高さから「精神的な幸福度」が37位と最低レベルでした。

脳に傷がつく

生まれたばかりの赤ちゃんの脳は約300〜400グラムです。
そこから、目覚ましい成長し、10歳くらいになると、大人の脳と同じくらいになります。脳の成長に不可欠なのが、周囲の人たちの暖かい刺激なのです。言い換えれば、不適切な療育を受けると、脳はダメージを受けて、本来と異なる形や大きさに変形してしまうのです。
愛着障害のあるこどもたちと、そうでない子どもたちの脳をMRIで比較調査してみたところ、叩く、なぐる、蹴るなどの身体的な過度の体罰は感情や思考のコントロールを司る「前頭前野」の一部を萎縮させます。夫婦喧嘩を目撃したりすると、大脳後方の「視覚野」が萎縮し、対人関係がうまくいかなくなります。ネグレクトは愛着障害につながり、喜びや快楽を生み出す「線条体」の働きを弱めます。性的虐待を受けたことのある子どもは左脳の「一次視覚野」と呼ばれる場所の容積が萎縮します。
もう一つ明らかになったのが「線条体」(脳底中央部付近)と呼ばれる部位の働きが弱くなってしまっていることです。
線条体はやる気や意欲など前向きな気持ちと関係している場所です。脳科学では「報酬系」と言いますが。欲求が満たされて"ご褒美"をもらえたとき、あるいは、これから"ご褒美"がもらえそうだと感じたとき線条体をはじめとする脳の報酬系が喜びや快楽を感じ、脳全体が活性化する仕組みになっています。 こどもが愛着障害になってしまう原因は乳幼児期という脳とこころの重要な発達期に、親との温かで愛情たっぷりの関係をもつことができなかったことにあります。

「しつけのつもり」が実は脳を変形させている。
子どもの身体をひどく傷つけたり、命まで脅かす虐待はニュースまでとりあげられ、本当に悲しい気持ちにさせます。
けれども虐待同様の不適切な養育は、生活のなかに数多くあります。
しつけとして日常生活の中に溶け込んでいます。
しつけですから、親は別に意識していません。
ところが、「しつけ」自体が子どもの脳を傷つけ、こころの発達を妨げているケースは少数ではないのです。
子どもを軽く叩いても体罰は体罰です。言葉の暴力も同様です。
何よりもよくないのは、言葉の暴力のほうが身体への暴力よりも脳へのダメージがおおきいのです。
さらに両親のDVを目撃してきた人たちのケースでは、身体的な暴力を目撃しているときよりも、親から親への言葉の暴力に接するときのほうが、脳へのダメージが深刻であることもわかっています。

こういう状況に子どもたちは打ち勝つために大切なこと

乳幼児の頃から、よりよい「生活習慣や食習慣」が子どもの健康を支えます。

第1に生活のリズム(基本的生活習慣)

※朝食、昼食、おやつ、午睡、夕食、入浴、就寝の時間を一定に、バラバラだと精神の安定に影響があります。
※睡眠:良好な睡眠は脳の発達に大切です。(6〜13歳は昼寝がないので、9〜13時間必要です)理想的には、3〜5歳、10〜13時間、小学生、9〜11時間、中学生8〜10時間の睡眠が必要です。
※運動:外での遊び・運動をしましょう。家族みんなでしましょう。
※スマホ・テレビ・ゲーム:利用時間を短くしましょう。(全て合わせて1日2時間以内)
※次に、外出ですが、生後2ヶ月くらいから外気浴を短時間、直射日光に気をつけて、天気の良い日は毎日外へ連れ出してください。外の刺激が発達に役に立ちます。また昼夜のリズムがつきやすくなります。成長するにつれて、行動範囲を広げてあげてください。

近隣の人たちや家族の会話をたくさん聞かせてあげてください。動物との接触も必要です。また自然の様々な変化を体験させてください。家族でキャンプをして川の流れや山の緑、紅葉そしてダイナミックな海の変化を見せるのも子どもの脳の発達にとって、とてもいいことです。そういったことが、後になって、子どもを大きく成長させていきます。公園や児童館に行って、他の子ども達や大人との接触も必要です。

※絵本の読みきかせはとても大切です。絵本の読みきかせが何故必要なのでしょう。絵本の読み聞かせは子どもがさまざまなことを学び、成長していくのに大変手助けとなると思います。
絵本の読み聞かせは4ヶ月健診のブックスタートから6才くらいまで必要です。お母さん、お父さんが協力して毎日短時間でも読み聞かせてください。想像力、推理する力、考える力が広がってきます。読み聞かせることにより感性が豊かになります。また言葉の発達や表現も豊かになります。子どもに夢や希望を与えてくれます。悲しみや喜び、やさしさ、勇気など心の世界を親とともに味わう喜びを学ぶことができます。もう一つは活字に接触することにより、テレビ、ゲーム、スマホばかり見ていた子どもに比較して、小学生になったとき、読解力が上がります。是非本など活字に接触をさせる生活をさせましょう。

幼児からの食習慣

・朝、昼、夕の三度の食事は規則正しく摂りましょう。寝る前の食事はやめましょう。
・テレビを見ながらの食事はやめて、家族だんらんを大切にしましょう。
・ゆっくりかむ習慣をつけてください。よく噛むと、顎の発達を促し、歯並びがよくなります。歯の病気予防に良いですし、味覚が発達します。消化を助け、脳の発達を促します。 肥満を防止します。
・できるだけ、主食、主菜、副菜を毎食一人分盛りつけて食べましょう。

※食事内容

<栄養バランスのよい食事とは>

・主食 力や体温になる。(ごはん、パン、麺類など)
・主菜 丈夫な体を作る。(肉、魚、卵、大豆製品など)
・副菜 体の調子を整える。(野菜、きのこ、海藻、いもなど)汁物
・おやつ 果物(ビタミン、ミネラル、食物繊維)や乳製品(カルシウム)
・よく噛めるように野菜や海藻、カルシウムをとる工夫をしましょう。
・主菜、副菜はコレステロールが増えすぎないように、肉、魚介、卵、豆など
を組み合わせて偏りのないように。
・カレー、とんかつ、ハンバーグは高エネルギーで肥満になりやすいので気をつけてください。
・ラーメン、シリアル、パスタ、ピザ、焼きそば、お好み焼きなど「油型」の主食は週に1〜2回までにしましょう。

おやつ(幼児のおやつは4番目の食事)

・子どもは消化管が未熟で1度に必要な量を食べることができません。栄養補給する必要があります。補食ですから、量に気をつけましょう。
・麦茶類を飲んで水分補給することが大切です。おにぎり、うどん、そば、焼き芋、ふかし芋、とうもろこし、せんべい、クラッカー、蒸しパン、牛乳(100cc)、バナナ、それにりんごやみかんや果物ジュースを少し追加してください。
・おやつは食育にもなります。楽しい時間という認識があり、一緒に作ると食に関心がわき、自分で作ろうというやる気につながります。
・高カロリーや甘いおやつはできるだけ避けましょう。洋菓子(ケーキ、クッキー、アイスクリームなど)や揚げせんべい、揚げ菓子は特別な日の楽しみに、清涼飲料水、炭酸飲料水、ジュース類は買わないようにしましょう。麦茶類が良いです。
・インスタント食品やスナック菓子は油分の摂りすぎになりますので要注意です。薄味に慣れましょう。

子どもに望むこと

幼少期はもちろんですが、学校で、そして社会人としても、うまくやっていって欲しいと願っていると思います。
勉強をしっかりして欲しいと思っていますが、それが全てではありません。
IQ(知能指数)や学力テストで計測される認知能力(記憶力、言語能力、判断力、計算力など)に対して「非認知能力」と呼ばれる能力が大切です。
非認知能力とは数字で表せない、豊かな「人間力」と「生きる力」です。能動的な心情を自分のなかでつくり出せる力です。主に自信、意欲(やりぬく力)、好奇心、自立心、自制心、忍耐力、協調、共感などの私たちの心の部分である能力のこと、つまり「目標や意欲、興味、関心をもち、粘り強く、仲間と強調して取り組む力や姿勢を中心」とする力です。
価値観が多様化するなか、学力至上主義を疑問視する声が強まり、急速に変化する社会を生き抜く力を育てるものとして、非認知能力への注目が高まっているのです。非認知能力はこれからの幼児教育だけでなく、子どもの教育全般の重要なテーマになるといわれています。
言いかえれば、自主的に参加したくなるような遊びや活動を子どもたちに用意してあげる必要があります。大学入試改革により、高校入試も「思考力」「判断力」「表現力」を重視するようになってきています。非認知能力が高ければ、時代の変化に応じて必要になる能力やスキルをその都度あとから身につけることは可能です。それが、先行きを見通せない時代を生きるセオリーです。(これは2020年度から改定された日本の学習指導要項の中心でもあります)

こういう研究発表もあります。
精神科医で「遊び」の研究者でもあるスチュアート・ブラウン(アメリカ カリフォルニア大学サンディエゴ校准教授 精神科医)によると、死刑囚監房にいる殺人犯たちの小児期には2つの共通点があるそうです。1つはなんらかの形で虐待されていたこと、そしてもう1つは、「子どもとして」遊ばせてもらえなかったことです。この研究は、小児期をピアノやその他の習い事や学習塾などの時間ばかり費やすのではなく、子どもが子供らしく「ただ遊ぶ」ことの重要性を指摘しています。音楽やスポーツ、学業はもちろん大切ですし、テレビやゲーム、ネットをみる時間にも意味があります。
私は子どもが様々な技能を習得することに反対しているわけではありません。特別な才能への深い情熱があるのなら、その情熱を追いかけるべきだと思っています。
しかし、子どもが深く考え込んだり、好奇心をもったり、単純に遊んだりする機会を奪ってはいけない。それらは全て、子どもが成長し、発達し、自分を見つけるのに役に立つのです。すなわち自由な遊びは「自己肯定感を育てる」のにとても大切です。ルールがなく、子どもは自由に自分の想像力にまかせて没頭できるからです。という論文です。

お父さん、お母さんの大切な役割

子どもの知性を磨き、社会性や自律心を育んで行くためには、お父さんとお母さん、それぞれの持ち場があります。
家族にもそれぞれの形がありますが、お母さんもお父さんも子育てをがんばりましょう!
たとえ短い時間でも、父親、母親としての役割をきちんと果たすことで、子どもの知性の土台をしっかり築くことはできるのです。

まず大切なことは、(例えば)夫婦ゲンカをすると、子どもの知能発達に悪影響があります。乳幼児期に慢性的に夫婦ゲンカを見ることによって、小脳の灰白質(神経細胞が密集する部分)が明らかに減少するという研究報告があります。小脳は技術を習得したりするのに重要な働きをしています。また小脳の灰白質の減少により情動障害をひきおこすこともあります。子どもにとって夫婦ゲンカが強烈なトラウマになるという(心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強い恐怖感、無力感、戦慄、悪夢)報告も多数あります。
お母さんは妊娠して約1年間かけて出産します。身体が2つに分かれるということです。
しかしながら、赤ちゃんとお母さんは出産後も長い間、精神的には1つなのです。赤ちゃんは、自分がお母さんと別人格だとは気づいていません。そして成長とともに、別の人間だと気づき始めます。それでも幼児期は心の深いところでは、ずっとつながっています。
一方お父さんとはそういう関係ではありません。最初から別の人間です。お父さんは生まれて初めて出会う他人なのです。
お父さん=他人=社会の関係ですから、お父さんとお母さんの関係を見て、他人との基本的な接し方を覚えていく訳です。
子どもは一人の人間としてお父さんから認められるという喜びによって、積極性、主体性など他人に向く健全な意識が育まれるわけです。そしてこのような考え方や行動のもとに責任感が育まれます。
子どもは向上心が強く、自分が向上していく上で目指す最初の模範が初めて出会う「他人」であるお父さんです。
正義、道徳、文化など、理屈ではない価値観を叩き込むのは、お父さんの仕事です。もう一つは父親と関わるほど認知能力や言語能力が高く、情緒的に安定していることがわかっています。(認知能力とは一般的には知能検査で測定できる能力のことを言い、「非認知能力」とは主に自信、意欲(やりぬく力)、好奇心、自立心、自制心、忍耐力、協調、共感などの私たちの心の部分である能力、さらにお父さんと子どもがより活発な遊びをするほど、新しい経験に遭遇した時に果敢に挑戦するようになり、成功を勝ち取るようになると言われています。
子どもにとってお母さんは安定、安心の象徴であるのに対し、お父さんは冒険、非日常の象徴です。子どもにとって、お母さんと遊ぶのと違って、お父さんと遊ぶのはワクワク感が全然違うのです。お父さんがダイナミックな遊びをすることで、挑戦する心、障害に負けない心が育まれていくわけです。 我慢強く、思いやり深く、規則正しい生活を送る子どもに育てるためには親が子どもに対し、我慢強く、思いやり深く接し、規則正しい生活を送らせる必要があります。 お父さん(お母さん)は子どもを自然の中に連れ出して遊びましょう。キャンプに行って、釣りやバーベキューを楽しんだり、スキーや海でシュノーケリングをしたり、たくさん冒険を経験させてください。

絵本の読み聞かせをすると、読解力があがる

では読解力は何故必要なのでしょう。
絵本の読み聞かせは4ヶ月健診のブックスタートから6才くらいまで必要です。
毎日短時間でも読み聞かせてください。想像力、推理する力、考える力が広がってきます。読み聞かせることにより感性が豊かになります。また言葉の発達や表現も豊かになります。子どもに夢や希望を与えてくれます。悲しみや喜び、やさしさ、勇気など心の世界を親とともに味わう喜びを学ぶことができます。もう一つは活字に接触することにより、テレビ、ゲーム、スマホばかり見ていた子どもに比較して、小学生になったとき、読解力が上がります。是非本など活字に接触をさせる生活をさせましょう。
読解力とは一般的には、文章を読み解く能力を指します。勉強においても仕事においても必須の能力です。
読解力とは、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力です。つまり、読解力とは、

※テキストを読み、正しく理解する。
※テキストの意味を理解する。
※テキストに基づいて自分の意見を論じる。

このことのできる能力であると言えるでしょう。
「つまり何について述べているのか。結局どのようなことを言いたいのか」ということです。
本や雑誌、新聞などを読み、まとめたり、感想文を書いたり日記を書いたりすると能力が伸びます。小学生低学年では教科書を理解できないところは飛ばし読みするので、音読させた方が良いです。理解できないところは辞書やパソコンで調べて覚える習慣をつけましょう。また重要なところは線を引いて理解しましょう。
日本の読解力は経済協力開発機構(OECD)79カ国、15歳を対象に2018年実施した結果は15位に低下しています。

かって数学者の藤原正彦さんは、学校教育に何が必要かと尋ねられて「一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数」と、やはり数学者で、現在国立情報学研究所教授、「教育のための科学研究所」所長の新井紀子さんは「一に読解、二に読解、三、四が遊びで五に算数」とおっしゃっています。
新井紀子さんは「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトを進めている人です。世界的にも著名な方で、「AIvs教科書が読めない子どもたち」という本を出版しています。2011年に「ロボットは東大に入れるか」と名付けた人工知能プロゼクトを始めました。このロボットは東ロボくんといいます。5年後2016年にはこの活動で世界的に名誉ある賞ももらっています。この年には東ロボくんの偏差値は57.1まで上昇しています。全国の国公立大学、私立大学の80%は合格可能となっています。現在数学のみに関しては、東大模試6問中4問に正解し、偏差値76.2という驚異的な成績を修めています。しかしながら、まだ東大合格には至っていません。本人はおそらく困難だろうと予測しています。
原因は読解力と常識の壁ということだそうです。

ではなぜ新井紀子さんはこういった挑戦をしたのでしょう。
それは近い将来AIが多くの人の仕事を奪ってしまうと予測しているからです。AIが絶対出来ない仕事は子育てや介護ですが、今後残っていきそうな仕事は、コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事やまた例えば、畦(あぜ)の草抜きのような柔軟な判断力が求められる肉体労働が多いそうです。AIが不得意な分野、つまり高度な読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断を要求される分野です。
多くの人があいまいに読んでいるので、全ての教科において「教科書」をよく読んで理解する。そのためには国語がいかに深く関わりを持っているか自覚することです。
とにかく教科書をよく読んで、意味を理解することです。
では「意味がわかって読める」ために、どう子育てしたらよいのでしょう。
読解力を上げるため新井紀子さんは次のように書いています。

「幼児期」の子育てについて、

1 身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やすこと。特に多様な年代の大人同士の会話を聞く機会が必要。
1 身近な大人が絵本を開いて、繰り返し読み聞かせをしてあげて欲しい。大人にとって繰り返しは往々にして苦痛だが、幼児にとって繰り返しが楽しい。
1 信頼できる大人に、自分は守られている、という実感を持てること。
1 社会に関心を持つようになったら、ごっこ遊びができる環境を作ったり、広告や駅名を読んでやったり、貨幣で何かを買ったり、簡単な料理を一緒にしたりする機会を増やしてあげたい。
1 日々の生活の中で、子どもが身近な小さな自然に接する時間を取ること。例えば、水は高いところから低いところへ流れること、その時に水が物を押し流す力あること、夕方最初に大きく光る星(宵の明星)があること、月が満ち欠けすること、秋になると紅葉し落葉する木があること、花をつける植物は種子ができたり実をつけたりすること、鳥が巣をかけてその中に卵を産みヒナを育てること、などが含まれるでしょう。子どもが十分に満足するまで、そのことをじっくり観察したり感じたりする時間を取ってあげたい。
1 子どもが自分に集中できる時間を十分に確保すること。
1 同世代の子どもたちと、十分に接する機会が確保されること。また、少し年上の子どもたちと、十分に接する機会が確保されること。また、少し年上の子どもたちがすることを真似たり、憧れたりする機会が確保されること。
1 小学生については、教科書をよく読み、音読をすること、分からないところがあると、飛ばし読みするからです。辞書をそばに置いておき、分からない文章が出たら、調べて覚えること。これを繰り返すと、語彙力(言葉や単語を知っていて、使える能力)が増えます。

以上、新井紀子さんが、危惧する未来がもうそこまできています。今、乳幼児の子育てをもっと大切に考えていくことが、最優先課題だと私は考えています。

参考図書:
AIvs教科書を読めない子どもたち、人生の基盤は妊娠中から3歳までに決まる、非認知能力の育て方、自己肯定感を高める最強の子育て、0〜3歳の子育てハッピーアドバイス、自己肯定感を高める子育て、ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本、子どもの脳を傷つける親たち、子どもが心配 他20冊。

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